Nがバイトを始めてから、わたしたちの絆に生じたひび割れが加速した。
	それは、音を立てて走るようであった。
	Nはとても疲れているように見えた。
	肉体的にも疲れているだろうが、精神的な疲れを感じるのである。
	これは、Nが初めて触れる経済という名の世界を生きることによって生じる疲れなのではないかと思える。
	これまでは、経済活動とは無縁の人生を生きてきた。
	それに加え、他人との社会生活というものに触れたのも初めてだろう。
	これまでの人生で接することがあった他人というものは、間接的な知人であることが多かったであろう。
	親を知っている他人や、共通の知人を持つ他人などの小さなコミュニティの中で生きていたのである。
	何の関わりも無い様々な人の考え方や価値観に触れ、自身の考え方や価値観にも変化が生じたのであろう。
	
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