わたしの頭は、Nの提案を受け入れることによって、既存のルートを進むように計らった。
	頭が考えるには、それが最善である。
	それは、頭がNという遺伝子を失いたくないからであろう。
	頭とは脳のことであり、肉体であり、遺伝子のことである。
	肉体は異性との時間を喜ぶ。
	会話をしても、皮膚に触れても、脳はドーパミンを放出し興奮する。
	肉体にとってはそれが目的なのであろう。
	そして、遺伝子には子孫を残すという最大の目的があるため、Nを失う訳にはいかないのだ。
	そのため、Nと離れるという選択肢は導かない。
	あの夜、わたしにNの身体を求めさせたのも遺伝子であろう。
	もちろん、それに従い、惨めな気持ちを得たのはわたしの弱さである。
	ここでNの提案を受け入れることは、肉体にとっては都合が良く、わたしは中途半端な苦しみと喜びを味わうことになるだろう。
	それでは、何も変わらないのである。
	