わたしは悪魔と話し合うことが大切だと思い、足を踏み出した。
悪魔は抵抗することを諦めずに、どうにか鎖の拘束を解こうとしていた。
わたしは悲鳴を上げて軋(きし)む鎖を頼り切ることができずに、多少の恐怖と警戒を抱えていた。
悪魔に捕まらないように、いつでも身を引く構えをしていたのである。
「お前はどうしてここにいるんだ?」
わたしは大声で問い掛けた。
悪魔は答えなかった。
「お前は何者なんだ?」
叫ぶようにして、再び問うた。
しかし、悪魔が答える様子は無い。
悪魔には、わたしと心を通わせるつもりが無いのだと悟った。
それは、人間を信用することが出来なくなった野良犬の様だと思うのであった。
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