わたしは重心を後ろに置くことをやめた。
	
	もう、どうにでもなれである。
	わたしは悪魔にできる限り近付き、その巨大な太ももに触れた。
	冷たい感覚と怒りの感情がわたしを襲う。
	そこに恐怖を感じたために咄嗟(とっさ)に手を離そうとしたが、理性によって思い止まった。
	ここで離してしまえば、覚悟の意味が無くなってしまうのである。
	悪魔から流れ込んでくるものは不快以外の何物でもなかったが、それを受け入れることをしなければ、わたしが心を開いたことにはならないのである。
	悪魔は暴れていたが、わたしは瞼を閉じて、掌(てのひら)から伝わる情報の解読に神経を集中させた。
	
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