進む程に音は大きくなった。
	それは、わたしが音の原因に近付いていることを現しているのだろう。
	しばらく行くと、暗闇の中に更に黒い人影が見えた。
	わたしは胸の辺りにまで達した黒い水を掻き分けながら、そこへ向かった。
	それは鎖に繋がれた悪魔であった。
	全身を覆う黒く短い毛。
	異様に細く長い手脚。
	小さな頭。
	チンパンジーを思わせる者の背中には、まるでコウモリのような羽が折り畳まれていた。
	この姿を形容するのであれば、悪魔という表現が妥当であるだろう。
	それが膝(ひざ)を崩して項垂(うなだ)れ、手首を鎖に縛られて上方に引き上げられていた。
	悪魔は見上げる程に大きいので、黒い水は彼の膝を隠す程度であった。
	
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