眼球がなく、皮を剥がれた人間がわたしの存在に気が付くのには、さほど時間は掛からなかった。
眼球があったであろう黒い二つの穴をわたしに向け、その存在を確かめているようである。
わたしは恐ろしさによって硬直し、その場を引くこともできなかった。
下半身が動かないのか、両脚を引き摺りながら両腕を使ってわたしに詰め寄る。
わたしは全く動くことができない。
そして、その手がわたしの足首を掴み、膝(ひざ)、太もも、腰という具合に上がってくる。
それは、言葉にならない微かなうめき声を上げている。
わたしはそれをとても苦しそうだと感じた。
抱き付くようにしてわたしにしがみつくそれは、何かを訴えているような気がしてならなかった。
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