大きな音を立てて、扉は開いて見せた。
錆び付いた蝶番が抵抗したが、冷静さを用いたわたしの心に対しては、従順にならざるを得なかったようである。
扉の奥には何も無かった。
いや、暗闇が何も無いように見せていたのである。
生暖かい風が頬を撫でるのを感じた瞬間に、強烈な吐き気に襲われた。
わたしは込み上げてくるものを感じ、その場に吐き出した。
それは、赤黒い血のようなものであった。
それが何なのかは分からなかったが、破滅的な性質を持つものであるということは想像が付く。
わたしは躊躇(ちゅうちょ)していた。
ある程度の想像はしていたが、扉の中は想像以上に苦しい場所であるだろう。
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