わたしは皆に胸の高鳴りを悟られないように気を使い、努めて冷静に仕事に取り掛かった。
意識をHさんの心に対して向けた瞬間に、わたしは目眩(めまい)と気分の悪さに襲われた。
脳に酸素が足りないような感覚に捕われ、わたしは平常心を失った。
猛烈な吐き気がわたしを冷静の中にどうにか引き止めている。
どのような人の心の中にも、破滅的な意識が存在している。
Hさんも例外ではない。
それは、Hさんの心の中にも不満や不安といった感情が存在しているということを示唆(しさ)していた。
わたしの状態は酷いものであった。
その時、わたしは胸から込み上げてくるものを感じ、それはゲップとなって表現された。
それは黒い煙のようであるけれど、アメーバのように粘液状のものにも見えるものである。
それは決して心地の好いものではないけれど、ケップによって吐き出せば爽快感を得ることができた。
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