わたしは自分自身が何をするべきなのかを知っていた。
それは、知識でも、推測でも、想像でもない。
男が女を抱く時にどうすれば良いかを本能的に知っているように、わたしの精神と肉体は自らの必要を理解しているのである。
わたしは何も考えなかった。
ただ、状況がわたしを必要へと運ぶ。
母親の背中にぽっかりと空いた穴の中に右腕を突っ込み、わたしは人影に触れた。
そして、人影を力一杯に掴み、そのまま力一杯に引いた。
見た目とは違い、人影は地に根を下ろした樹木のように頑丈であり、簡単には動かなかった。
わたしは気合いを以て疲れた身体(精神)に全霊を込めた。
びくともしなかった人影が僅(わず)かに動く。
それを見て、わたしは更なる力を振り絞った。
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