そのような思いに至った時、わたしは自らの身体が自分自身とは違う意思によって導かれるのを感じていた。
わたしがそのように考えなくても、右手は人差し指と中指を差し出し、宙に一筋の線を描いた。
それは暗闇を照らす蝋燭(ろうそく)のように優しく、また、暗闇を切り裂くハロゲンランプのように力強い光によって杭が生み出された。
わたしは光の杭を掴むと、それを目の前の人影に対して再度投じた。
それは迷うことなく一直線に人影を射抜いた。
それによって人影が何かの反応を示すということはなかった。
人影は完全に沈黙しているようである。
わたしは腕を伸ばして人影を掴んだ。
次の瞬間には意識が切り替わり、わたしは目を閉じたままで現実の世界に戻っていた。
五感が目覚め、母親の背中に触れている実感を得る。
目は開かない。
目を閉じたままでもわたしには母親の心の中が見えた。
そして、わたしは母親の心の中にあの人影の姿を認めた。
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