真っ黒な人型の影は、上半身を水面から出してただ立っているだけだったが、わたしにはその真っ黒な人影が恨みの感情を抱いているような気がしていた。
表情も何も分からないが、冷たい刃物のような殺気を感じる。
近付く者があれば敵と見なして飛び掛かってくるのではないかと思わせる狂気がそこにあった。
わたしは最大限に警戒していた。
わたしはこの真っ黒な人型の影が怖いものだと思うのである。
野生の動物と対峙しているような感覚である。
山でイノシシに出会った時の緊張感に似ている。
真っ黒な人型の影との対峙は、少なからず、命が関わっているように思えたのである。
わたしは蛇に睨(にら)まれた蛙のように、身動きが取れないでいた。
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