光の十字架が放つ光によって、黒い霧の中の顔は、それぞれが悲鳴と共に黒い煙のようなものを吐き出した。
これは、黒い霧の中の顔がそれぞれに抱えている矛盾であり、破滅的な感情なのである。
黒い霧の中の顔が黒い煙のようなものを吐き出すと、それに比例して黒い霧が薄らいだ。
黒い霧が黒い煙に変換されているのであろう。
光の十字架がその輝きを失うのと、黒い霧の中の顔が黒い煙を吐き出し終えるのは同時であった。
黒い煙を吐き出し終えると、黒い霧の中の顔は沈黙した。
黒い煙は、彼等の頭上で行き場をなくしている。
わたしは再び宙に十字を描いて、光の十字架を黒い煙に投じた。
すると、強烈な吐き気に押し出されるようにしてゲップをした。
どのような仕組みなのかは分からないが、わたしの身体はゲップによって黒い煙である破滅的な感情を光へと変換する。
一度のゲップでは大量の黒い煙を光に変換することは出来ない。
そのため、わたしの身体は何度もゲップを繰り返すのであった。
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