わたしは、部屋中に充満している黒い霧の中の顔に対して、感謝の気持ちを告げた。
老女は実感してはいないだろうが、今まで老女と遊んでくれたのである。
何かしらの学びを与えてくれているはずだ。
わたしが感謝の気持ちを伝えると同時に、わたしの右手が虚空(こくう)に十字を描いた。
すると、十字の形に空間が裂け、そこに光が生じた。
それは光の十字架となった。
光の十字架を掴むと、わたしはそれを黒い霧に向かって投じた。
光の十字架は黒い霧の中にとどまり、強い光を放って輝いた。
すると、光に呼応(こおう)するように、黒い霧の中の顔が一斉(いっせい)に叫び声を強めた。
それは、断末魔(だんまつま)の叫びというのだろうか?必死になって叫んでいるような声であった。
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