裏山への登山道は、裏庭の擁壁(ようへき)のために迂回(うかい)しなければならなかった。
	とはいえ、小さな山である。
	2〜300mも歩けば、ミカン畑から登ることが出来る。
	ミカン畑は段々畑として急斜面に設けられており、作業はモノラックで行われる。
	そのために、人が徒歩で山を登るための道は整備されていない。
	わたしは滑り落ちないように気を付けながら、畑の横の急斜面を這(は)うように登った。
	子どもの頃は何往復もして遊んだ場所であったが、20代も後半に差し掛かろうとしている肉体には簡単なものではなかった。
	子どもの頃は、皆で滑り降りていたが、今では恐怖が勝るのである。
	後先を考えているのである。