暗闇の中には先程とは違う光景があった。
そこには、無数の人がうごめいているのが見え、またその全ての人が指を鍵状にした腕を目一杯に頭上へと掲げているのである。
そこにいる全ての人が影のように黒い姿をしており、目と口があるであろう場所には、更に黒い穴が空いているのみであった。
本来ならば口のあるべき場所に空いた穴からは低い悲鳴のような音が漏れている。
わたしはこの人たちが何かを必死に掴もうとしているように思えた。
暗い穴の中に落ち込んで、そこから抜け出すために藁(わら)をも掴もうとしているように見えたのだ。
彼らが掴もうとしていたのはわたしであると確信する。
彼らは、わたしという希望を見たのではないだろか?
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