穴の中を覗いていると、わたしは思考が崩れていくような感覚を得て、すべてがどうでも良いように思えてきた。
やる気が失われ、目的を忘れそうである。
わたしは魅入るように穴の暗闇を見ていたが、いつからか声のようなものがどこからか聞こえているのに気が付いた。
わたしは驚きはしなかった。
それは、気力が失われていたからである。
無気力なまま暗闇を見詰め、声のようなものを聞いていた。
「光を失ったのだ」
突然、頭の中に一筋の閃光が走った。
その言葉によって呪縛から解き放たれるように我に返ると、わたしは前傾に身体を倒し、今にも穴の中に落ち込みそうな体制を取っていた。
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