既に身体を支配していた重さは無い。
気分の悪さも去り、心地の好い気分だけが残っていた。
わたしは昼寝から目覚めた時の充足感に似た気分に促(うなが)されて瞼(まぶた)を開いた。
フロントガラス越しの青空を眺めながら、老女と黒い人影達のことを思い返していた。
わたしは可能性を掴んだ彼等を羨(うらや)ましく思っていたのである。
それは、幼い頃のわたしが、友人が買い与えられた新しい玩具(おもちゃ)を羨ましく思い、わたしも新しい玩具が欲しいと願う心の働きと同じであるだろう。
わたしも、彼等のように新しい可能性を欲していた。
それは、新しい可能性が楽しみであることを知っているからである。
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