彼と別れて数日が経過していた。
わたしは真鯛の出荷作業のためにバイクで現場に向かっていた。
夏の六時過ぎは明るい。
日の出の前の冷たい空気が心地好かった。
バイクは快調にアスファルトを蹴った。
ゆったりとバイクで走る夏の朝ほど快(こころよ)いものもないだろう。
わたしはリラックスして、一定のリズムを刻む単気筒エンジンの排気音を楽しんでいた。
わたしの住んでいる北灘(きたなだ)という場所は、山と海に挟まれた海岸線に家が並ぶ漁師町である。
大抵の道は対向車線もない細い道であるが、そこに大型のバスや活魚車も走る。
北灘街道を通り抜けるためには、途中で何度も道の譲り合いをしなければならなかった。
そして、道が狭い割には交通量が多い。
また、地元の住民は道に慣れているために怠慢な運転をする者も多かった。
わたしはバイクという立場であるために、日頃から安全運転を心掛けていたのである。
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