わたしはせっかくのデートが台無しになったことに絶望感を覚えた。
「分かった。すぐに戻る」
簡単に応え、電話を切った。
わたしはNに対して事情を説明した。
Nの家も同じ養殖業を営んでいたので、それがどのようなことなのかは簡単に想像することができただろう。
残念そうにはしていたが、納得していたようであった。
車を反転させて、来た道を戻る。
ワンセグ放送で映し出されるアナログTVの中の笑顔と、騒がしい笑い声だけが車内に響いていた。
わたしたちは沈黙したままで、同じ道を重たい身体と気持ちを乗せて走ったのである。
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