自分という存在が分からなくなった時、わたしは怒りの感情が端から崩れていくのを感じていた。
今まで自分自身だと思っていた人間が分からなくなると、わたしは強烈な絶望感に襲われたのである。
それは、自己の否定であるように思えた。
怒りの感情が心の容量を超え、心を壊したのだろう。
わたしは自分という存在が世界から否定され、掌(てのひら)から擦り抜けてどこかへ去っていくような感覚を味わった。
それはとても苦しく、とても悲しいものであった。
人の最大の苦しみは、自分という存在を見失うことであるのかも知れない。
自分という最大の拠(よ)り所を失うことは、絶望以外の何物でもない。
人は自分という存在によって必要を満たすのである。
その自己を失ってしまうことは、必要を失うことに等しいのだ。
人生の中心は自己である。
それを見失うことなく保つことは、とても大切なことなのである。
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