「くそぉぉぉあぁあぁぁぉお!!」
それは、あまりにも耳障りな怒声であった。
きっと、K以外には聞こえてはいないであろう耳をつんざくような奇声が山に反響して返ってくるようである。
わたしはその光景に身震いするのを感じたが、同時に冷静さが導かれるのを感じていた。
「落ち着きなさい」
わたしは耳元、もしくは心の深い場所に優しくも力強い声を聞いた。
それは大天使ミカエルの声に違いなかった。
大天使ミカエルの声は世界から一切の音を消し去る。
女の奇声が消える。
川の流れが消える。
虫の合唱が消える。
友の会話が消える。
そして、何より自分自身の声が消えた。
わたしは静寂の中に解き放たれるのである。
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