深く吸い込んだ息をゆっくり吐き出す。
その効果なのか、胸の鼓動が少しだけ穏やかになったような気がした。
気休め程度であるが、それでもわたしはそれを有難く感じるのであった。
女の様子を伺うKの横顔は、おもちゃ屋の子どものような好奇心に溢れていた。
それに釣られてわたしも楽しさを思い出すことができた。
「さっきから、凄い怒ってるよ。Aに触れるとそれが特に酷い…」
わたしの言葉にKは何かが腑に落ちたような表情を浮かべた。
その表情を見送って、わたしは女に目をやった。
女は暗闇の中で全身を小刻みに震わせていた。
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