尋常ではない耳鳴りに、わたしは痛みさえ感じていた。
甲高く響き渡る金属音のようなそれは、わたしの世界から川の流れる音、虫の声、そして皆の談笑を奪い去るのであった。
わたしは強烈な耳鳴りに耳を抑えて耐えた。
すると、どうしてもある一点が気になるのであった。
耳鳴りはわたしの中から響き渡る音のように思えるが、その原因は外にあり、わたしが無意識に気になるその一点にそれがあるような気がしてならなかったのである。
わたしは顔を上げてその一点に視線を送った。
そこは、ペンション横の川原へと続く階段であった。
そこには驚くことに白い浴衣のような服を着た黒髪の女が立っていた。
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