女はどうにかしてAに近付きたいのであろう。
結界を掻い潜り、Aに辿り着く手段と隙(すき)を探している。
わたしは気を緩めないように意識を張り、全神経が結界に触れるように努めた。
Aはもちろん、K以外の誰も女の存在と今の状況を知らない。
わたしは変に緊張していたであろうし、女の出方が気になって話の輪の中には入れそうにもなかった。
女はゆっくりとわたしたちの周りを歩いた。
その視線は常にAに対して向けられている。
わたしは女が何を求めているのかを知りたかった。
どのような経緯が女を怒りに縛り付けているのであろうか?
そして、どうすればこの状況を打開することができるのであろうか?
わたしは答えが欲しかった。
このままの状態が続けば、わたしの精神は磨り減ってしまうだろう。
このブログについて
自身の体験をつづりたいと思います。
拙い文章ではありますが、お暇ならお付き合いください。
拙い文章ではありますが、お暇ならお付き合いください。
2013年2月28日木曜日
2013年2月27日水曜日
追憶 372
わたしは静寂の中に目を閉じて、この状況の中に自分がやるべきことを探した。
この危機的な状況を乗り越えるためには、冷静さと分析が必要であるだろう。
女が本当に求めているものを与え、それを満たすことができなければこの問題を解決することはないだろう。
わたしは自らの心の中に女に対する思いやりが溢れてくるのを感じていた。
目を閉じていると、目の前の暗闇の中に女の姿が浮き出てくる。
女はもう叫んではいなかった。
その代わりに、猫背に両手を垂らした状態でわたしが張った結界の周りを回っている。
その姿は獲物を狙う狼のようであった。
この危機的な状況を乗り越えるためには、冷静さと分析が必要であるだろう。
女が本当に求めているものを与え、それを満たすことができなければこの問題を解決することはないだろう。
わたしは自らの心の中に女に対する思いやりが溢れてくるのを感じていた。
目を閉じていると、目の前の暗闇の中に女の姿が浮き出てくる。
女はもう叫んではいなかった。
その代わりに、猫背に両手を垂らした状態でわたしが張った結界の周りを回っている。
その姿は獲物を狙う狼のようであった。
2013年2月26日火曜日
追憶 371
「くそぉぉぉあぁあぁぁぉお!!」
それは、あまりにも耳障りな怒声であった。
きっと、K以外には聞こえてはいないであろう耳をつんざくような奇声が山に反響して返ってくるようである。
わたしはその光景に身震いするのを感じたが、同時に冷静さが導かれるのを感じていた。
「落ち着きなさい」
わたしは耳元、もしくは心の深い場所に優しくも力強い声を聞いた。
それは大天使ミカエルの声に違いなかった。
大天使ミカエルの声は世界から一切の音を消し去る。
女の奇声が消える。
川の流れが消える。
虫の合唱が消える。
友の会話が消える。
そして、何より自分自身の声が消えた。
わたしは静寂の中に解き放たれるのである。
それは、あまりにも耳障りな怒声であった。
きっと、K以外には聞こえてはいないであろう耳をつんざくような奇声が山に反響して返ってくるようである。
わたしはその光景に身震いするのを感じたが、同時に冷静さが導かれるのを感じていた。
「落ち着きなさい」
わたしは耳元、もしくは心の深い場所に優しくも力強い声を聞いた。
それは大天使ミカエルの声に違いなかった。
大天使ミカエルの声は世界から一切の音を消し去る。
女の奇声が消える。
川の流れが消える。
虫の合唱が消える。
友の会話が消える。
そして、何より自分自身の声が消えた。
わたしは静寂の中に解き放たれるのである。
2013年2月25日月曜日
追憶 370
「うおっ!」
Kが小さく声を上げる。
女は物凄い勢いで近寄ってくる。
わたしはこの状況をまずいと感じた。
それは、わたしには女のことを制することができないからである。
腕力でならば負けることはないであろうが、もちろん腕力が通じる相手ではない。
わたしは混乱する頭をフル回転させて打開策を探した。
その時、女は壁に衝突するように足を止めた。
「!?」
わたしはその光景に驚いた。
目の前に何が起こっているのか理解することができなかったからである。
女はまるでガラスのような見えない壁に阻まれて、こちらに近付くことができないようであった。
Kが小さく声を上げる。
女は物凄い勢いで近寄ってくる。
わたしはこの状況をまずいと感じた。
それは、わたしには女のことを制することができないからである。
腕力でならば負けることはないであろうが、もちろん腕力が通じる相手ではない。
わたしは混乱する頭をフル回転させて打開策を探した。
その時、女は壁に衝突するように足を止めた。
「!?」
わたしはその光景に驚いた。
目の前に何が起こっているのか理解することができなかったからである。
女はまるでガラスのような見えない壁に阻まれて、こちらに近付くことができないようであった。
2013年2月24日日曜日
追憶 369
小刻みに震える女は再び顔を伏せてその表情を隠した。
わたしはなぜか女を挑発したくなった。
怖いもの見たさというやつであろうか?
女の感情を逆撫でするとどうなるのか?女(霊)の反応を知りたかったのである。
女を挑発するには、Aに触れることが最も有効的であるだろう。
わたしは本当に心配する気持ちでAの肩に触れた。
すると、女は再び般若のように怒りに歪んだ顔を見せて、奇声を発しながら今度は物凄い勢いで走り寄ってきた。
走るというよりは、手足をグチャグチャに振り回しながら近寄ってくるという感じである。
関節が稼働域を越し、人間では曲がらないであろう方向にそれは曲がっていた。
わたしはなぜか女を挑発したくなった。
怖いもの見たさというやつであろうか?
女の感情を逆撫でするとどうなるのか?女(霊)の反応を知りたかったのである。
女を挑発するには、Aに触れることが最も有効的であるだろう。
わたしは本当に心配する気持ちでAの肩に触れた。
すると、女は再び般若のように怒りに歪んだ顔を見せて、奇声を発しながら今度は物凄い勢いで走り寄ってきた。
走るというよりは、手足をグチャグチャに振り回しながら近寄ってくるという感じである。
関節が稼働域を越し、人間では曲がらないであろう方向にそれは曲がっていた。
2013年2月23日土曜日
追憶 368
深く吸い込んだ息をゆっくり吐き出す。
その効果なのか、胸の鼓動が少しだけ穏やかになったような気がした。
気休め程度であるが、それでもわたしはそれを有難く感じるのであった。
女の様子を伺うKの横顔は、おもちゃ屋の子どものような好奇心に溢れていた。
それに釣られてわたしも楽しさを思い出すことができた。
「さっきから、凄い怒ってるよ。Aに触れるとそれが特に酷い…」
わたしの言葉にKは何かが腑に落ちたような表情を浮かべた。
その表情を見送って、わたしは女に目をやった。
女は暗闇の中で全身を小刻みに震わせていた。
その効果なのか、胸の鼓動が少しだけ穏やかになったような気がした。
気休め程度であるが、それでもわたしはそれを有難く感じるのであった。
女の様子を伺うKの横顔は、おもちゃ屋の子どものような好奇心に溢れていた。
それに釣られてわたしも楽しさを思い出すことができた。
「さっきから、凄い怒ってるよ。Aに触れるとそれが特に酷い…」
わたしの言葉にKは何かが腑に落ちたような表情を浮かべた。
その表情を見送って、わたしは女に目をやった。
女は暗闇の中で全身を小刻みに震わせていた。
2013年2月22日金曜日
追憶 367
女はまさしく般若の面の様な顔をしていた。
目と口の中はただ真っ黒な空間が広がるだけの穴の様になっていたが、それでもわたしに対しての視線や怒りの感情を痛いくらいに感じる。
わたしは女の剣幕に圧倒されそうであった。
怒りの感情は人の心を傷付け、叩き潰すのには打って付けの力であるに違いない。
女の突き刺すような怒りの感情にわたしの心が押し潰されそうになった時、Kが口を開いた。
「おい…何かヤバイことになってるぞ」
わたしはKの顔を見て冷静さを取り戻すことができた。
しかしながら、胸の鼓動は単気筒エンジンの様に激しく脈打っている。
心の中でKに感謝して、わたしは深く息を吸い込んだ。
目と口の中はただ真っ黒な空間が広がるだけの穴の様になっていたが、それでもわたしに対しての視線や怒りの感情を痛いくらいに感じる。
わたしは女の剣幕に圧倒されそうであった。
怒りの感情は人の心を傷付け、叩き潰すのには打って付けの力であるに違いない。
女の突き刺すような怒りの感情にわたしの心が押し潰されそうになった時、Kが口を開いた。
「おい…何かヤバイことになってるぞ」
わたしはKの顔を見て冷静さを取り戻すことができた。
しかしながら、胸の鼓動は単気筒エンジンの様に激しく脈打っている。
心の中でKに感謝して、わたしは深く息を吸い込んだ。
2013年2月21日木曜日
追憶 366
その時、Aが小さく唸り声を上げた。
わたしはAが気分でも悪く吐きそうなのかと思って、声を掛けながらその背中を優しく摩った時だった。
わたしは激しい頭痛と耳鳴り、そして、全身が恐怖によって泡立つのを感じた。
それはとても嫌な気分であった。
わたしはその脅威に対して反射的に反応した。
Aから手を離し、恐怖に身構えた。
そこには女の姿があったが、それは先ほどの姿とは明らかに違っているのである。
女はまるで漫画のように髪の毛を逆立てながら、わたしに向かって
「そいつに、触るなぁぉぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
そう叫ぶのであった。
わたしはAが気分でも悪く吐きそうなのかと思って、声を掛けながらその背中を優しく摩った時だった。
わたしは激しい頭痛と耳鳴り、そして、全身が恐怖によって泡立つのを感じた。
それはとても嫌な気分であった。
わたしはその脅威に対して反射的に反応した。
Aから手を離し、恐怖に身構えた。
そこには女の姿があったが、それは先ほどの姿とは明らかに違っているのである。
女はまるで漫画のように髪の毛を逆立てながら、わたしに向かって
「そいつに、触るなぁぉぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
そう叫ぶのであった。
2013年2月20日水曜日
追憶 365
どういう理由なのかは分からないが、女はAを標的にしていた。
わたしはAに対する女の反応に興味があり、それがある意味楽しかったが、Aがしんどそうにしているのがとても気掛かりであった。
それに、このままの状態が続けばどうなるのであろうか?
女はAに取り憑き、何らかの破滅的な問題をもたらすに違いない。
わたしは女のことが見えている以上、Aのことを見て見ぬ振りをすることなどできなかった。
とは言え、何をどうすれば良いのか分からない。
わたしにできることはAを気に掛けることくらいであったのである。
相変わらずAは俯いた状態で座り、顔を上げようとはしなかった。
皆も飲み過ぎか、眠たいのだろうと思っているのか、Aを心配はすれど、特に話し掛けるということはなかった。
わたしはAに対する女の反応に興味があり、それがある意味楽しかったが、Aがしんどそうにしているのがとても気掛かりであった。
それに、このままの状態が続けばどうなるのであろうか?
女はAに取り憑き、何らかの破滅的な問題をもたらすに違いない。
わたしは女のことが見えている以上、Aのことを見て見ぬ振りをすることなどできなかった。
とは言え、何をどうすれば良いのか分からない。
わたしにできることはAを気に掛けることくらいであったのである。
相変わらずAは俯いた状態で座り、顔を上げようとはしなかった。
皆も飲み過ぎか、眠たいのだろうと思っているのか、Aを心配はすれど、特に話し掛けるということはなかった。
2013年2月19日火曜日
追憶 364
一緒の時間を過ごす人がポジティブで建設的な心を所有しているのであれば、わたしたちはポジティブで建設的な影響を受けることになる。
一方、一緒の時間を過ごす人がネガティブで破滅的な心を所有しているのであれば、わたしたちはネガティブで破滅的な影響を受けることになるのである。
周囲の人たちからの影響を拒絶することはできない。
どのような人物であっても、一緒の時間を過ごす人からは必ず何らかの影響を受けているのである。
わたしたちは今、このキャンプ場で女と一緒の時間を過ごしている。
女はネガティブで破滅的な感情である怒りを所有している。
その影響を直接的に受けているのがAなのであった。
一方、一緒の時間を過ごす人がネガティブで破滅的な心を所有しているのであれば、わたしたちはネガティブで破滅的な影響を受けることになるのである。
周囲の人たちからの影響を拒絶することはできない。
どのような人物であっても、一緒の時間を過ごす人からは必ず何らかの影響を受けているのである。
わたしたちは今、このキャンプ場で女と一緒の時間を過ごしている。
女はネガティブで破滅的な感情である怒りを所有している。
その影響を直接的に受けているのがAなのであった。
2013年2月18日月曜日
追憶 363
わたしがAの様子を伺うと女は殺気立った。
女はわたしがAに対して気をかけることによって殺意を抱き、それを増幅させるようである。
女が見ていたのはわたしたちではなくAであったのだ。
女のAに対する目的が何なのかは分からなかったが、Aに対して何らかの目的を持っているということは分かった。
もしかすると、Aに元気がないのも一部としては女からの影響があるのかもしれない。
人は意識と意識で繋がっている。
気持ちや気分や感情などの心によって繋がりを持っているのである。
それは無意識の内に行なわれる絆の形成であり、わたしたちにそれを判断し、操作することはできない。
女はわたしがAに対して気をかけることによって殺意を抱き、それを増幅させるようである。
女が見ていたのはわたしたちではなくAであったのだ。
女のAに対する目的が何なのかは分からなかったが、Aに対して何らかの目的を持っているということは分かった。
もしかすると、Aに元気がないのも一部としては女からの影響があるのかもしれない。
人は意識と意識で繋がっている。
気持ちや気分や感情などの心によって繋がりを持っているのである。
それは無意識の内に行なわれる絆の形成であり、わたしたちにそれを判断し、操作することはできない。
2013年2月17日日曜日
追憶 362
Aに話し掛けると、女からの殺気が一層強くなって伝わってくる。
わたしは動悸を抑えることに必死であったが、同時にその感覚に対して興味を抱き、楽しみを覚える自分もいた。
どちらかと言えば、女の殺気に対する恐怖心や危機感よりも、興味や楽しさの方が上回っていた。
わたしは霊から受け取る感覚を求めているのである。
それは、わたしの目的であり、自らの掲げる目標を達するためにはどうしても必要なものだった。
わたしは霊のことを知りたい。
その未知の世界を解き明かしたい。
そして、できることならそこに存在している苦しみを取り除きたいのである。
だから、わたしは女に対して拒絶心は持たなかった。
女の反応を見て、霊というものを研究しているのである。
わたしは動悸を抑えることに必死であったが、同時にその感覚に対して興味を抱き、楽しみを覚える自分もいた。
どちらかと言えば、女の殺気に対する恐怖心や危機感よりも、興味や楽しさの方が上回っていた。
わたしは霊から受け取る感覚を求めているのである。
それは、わたしの目的であり、自らの掲げる目標を達するためにはどうしても必要なものだった。
わたしは霊のことを知りたい。
その未知の世界を解き明かしたい。
そして、できることならそこに存在している苦しみを取り除きたいのである。
だから、わたしは女に対して拒絶心は持たなかった。
女の反応を見て、霊というものを研究しているのである。
2013年2月16日土曜日
追憶 361
それは突き刺す殺意のようであった。
殺気を辿ると、そこにはあの女が立っている。
わたしが感じるこのプレッシャーは、あの女が放つ殺気によるものだと感じた。
しかしながら、何故女はいきなり殺気立ったのであろうか?
それには何かしらの原因があるはずである。
わたしが何かしたのか?
わたしがしたことと言えば、Aを気に掛けたことくらいである。
女が殺気立つことに対して考えられる原因はそれくらいであった。
わたしは高鳴る鼓動に平然を装いながら、再度Aに対して話し掛けてみた。
殺気を辿ると、そこにはあの女が立っている。
わたしが感じるこのプレッシャーは、あの女が放つ殺気によるものだと感じた。
しかしながら、何故女はいきなり殺気立ったのであろうか?
それには何かしらの原因があるはずである。
わたしが何かしたのか?
わたしがしたことと言えば、Aを気に掛けたことくらいである。
女が殺気立つことに対して考えられる原因はそれくらいであった。
わたしは高鳴る鼓動に平然を装いながら、再度Aに対して話し掛けてみた。
2013年2月15日金曜日
追憶 360
相変わらず耳鳴りは続いていたが、わたしはそれを無視した。
それは、今のわたしにはどうすることもできなかったからである。
わたしの座っている場所からペンションは正面に位置する。
そのため、自ずと視界には女が映る。
視界の中に映り込む女を気にしないように努めても、暗闇の中に浮き上がって見えるその姿はやはり気に掛かるものだ。
わたしは女から意識を遠ざけるために皆との間に楽しい話題を探すことに専念した。
皆の様子を伺(うかが)っている時、俯(うつむ)くAの姿が気になった。
以前にも増してしんどそうに見えたので声を掛けると、突然に自らの心臓が大きく脈打つのを感じた。
どういう訳か、とても大きなプレッシャーを感じるのである。
緊張感というか、危機感というか、ただ事ではない感覚がわたしを襲うのであった。
それは、今のわたしにはどうすることもできなかったからである。
わたしの座っている場所からペンションは正面に位置する。
そのため、自ずと視界には女が映る。
視界の中に映り込む女を気にしないように努めても、暗闇の中に浮き上がって見えるその姿はやはり気に掛かるものだ。
わたしは女から意識を遠ざけるために皆との間に楽しい話題を探すことに専念した。
皆の様子を伺(うかが)っている時、俯(うつむ)くAの姿が気になった。
以前にも増してしんどそうに見えたので声を掛けると、突然に自らの心臓が大きく脈打つのを感じた。
どういう訳か、とても大きなプレッシャーを感じるのである。
緊張感というか、危機感というか、ただ事ではない感覚がわたしを襲うのであった。
2013年2月14日木曜日
追憶 359
突然現れた女に驚いたが、すぐにこの女がKの言っていた霊であることを理解した。
女はただ立ち尽くしていた。
その表情を確認することはできないが、確実にわたしたちのことを見ている。
明確な理由はないが、そう思える。
Kの話では、昼間からずっとペンション横の階段のところにいるようである。
何か理由があるのだろうか?
そして、何か訴えたいことでもあるのだろうか?
考えてもその答えに辿り着けそうもなかったので、わたしは女から視線を逸らして、何事もなかったように皆との談笑に戻った。
女はただ立ち尽くしていた。
その表情を確認することはできないが、確実にわたしたちのことを見ている。
明確な理由はないが、そう思える。
Kの話では、昼間からずっとペンション横の階段のところにいるようである。
何か理由があるのだろうか?
そして、何か訴えたいことでもあるのだろうか?
考えてもその答えに辿り着けそうもなかったので、わたしは女から視線を逸らして、何事もなかったように皆との談笑に戻った。
2013年2月13日水曜日
追憶 358
思い返してみると、霊というものは皆そのような見え方をしているように思える。
それは、霊が物体ではないからである。
物体ではないために、自然界の光の影響を受ける必要がないのであろう。
霊は意識である。
わたしたちの心、それが霊の正体である。
心というものは物体としての形を持たない。
しかしながら、その存在を認めることができる。
人は誰しも、形を持たない心という存在を認めざるを得ない。
霊という存在を信じることができない人であっても、心の存在を否定することはできないであろう。
目に見えるものがすべてだという考え方には無理があるのである。
電気も紫外線も赤外線も、小さなものや遠くのもの、物陰にあるもの、後ろのもの…
目では見えないものがこの世界には多過ぎる。
しかしながら、多くの人は目に見えるものだけを信じ、目に見えないものは否定するのである。
これを矛盾というのは明白な事実である。
それは、霊が物体ではないからである。
物体ではないために、自然界の光の影響を受ける必要がないのであろう。
霊は意識である。
わたしたちの心、それが霊の正体である。
心というものは物体としての形を持たない。
しかしながら、その存在を認めることができる。
人は誰しも、形を持たない心という存在を認めざるを得ない。
霊という存在を信じることができない人であっても、心の存在を否定することはできないであろう。
目に見えるものがすべてだという考え方には無理があるのである。
電気も紫外線も赤外線も、小さなものや遠くのもの、物陰にあるもの、後ろのもの…
目では見えないものがこの世界には多過ぎる。
しかしながら、多くの人は目に見えるものだけを信じ、目に見えないものは否定するのである。
これを矛盾というのは明白な事実である。
2013年2月12日火曜日
追憶 357
女は腰まで伸びたボサボサの髪の毛と両腕を無気力に垂らして立っている。
髪の毛で隠れているためか、顔は真っ暗でその表情はうかがい知ることはできなかった。
わたしはその女が人間ではないということを知っていた。
それは、こんな闇夜にもかかわらずに、まるで女だけがはっきりとした輪郭を以って浮き上がっているからである。
まるで、暗闇の中でテレビを見ているような感覚である。
発光しているという訳ではないが、自然界の光の影響を受けてはいないのだ。
常識で考えるとあり得ない話である。
所謂、超常現象というやつであるだろう。
しかしながら、その光景に不自然さは感じない。
常識的に考えるとおかしいのだが、自然な感覚(心)に任せるとおかしくはないのである。
髪の毛で隠れているためか、顔は真っ暗でその表情はうかがい知ることはできなかった。
わたしはその女が人間ではないということを知っていた。
それは、こんな闇夜にもかかわらずに、まるで女だけがはっきりとした輪郭を以って浮き上がっているからである。
まるで、暗闇の中でテレビを見ているような感覚である。
発光しているという訳ではないが、自然界の光の影響を受けてはいないのだ。
常識で考えるとあり得ない話である。
所謂、超常現象というやつであるだろう。
しかしながら、その光景に不自然さは感じない。
常識的に考えるとおかしいのだが、自然な感覚(心)に任せるとおかしくはないのである。
2013年2月11日月曜日
追憶 356
尋常ではない耳鳴りに、わたしは痛みさえ感じていた。
甲高く響き渡る金属音のようなそれは、わたしの世界から川の流れる音、虫の声、そして皆の談笑を奪い去るのであった。
わたしは強烈な耳鳴りに耳を抑えて耐えた。
すると、どうしてもある一点が気になるのであった。
耳鳴りはわたしの中から響き渡る音のように思えるが、その原因は外にあり、わたしが無意識に気になるその一点にそれがあるような気がしてならなかったのである。
わたしは顔を上げてその一点に視線を送った。
そこは、ペンション横の川原へと続く階段であった。
そこには驚くことに白い浴衣のような服を着た黒髪の女が立っていた。
甲高く響き渡る金属音のようなそれは、わたしの世界から川の流れる音、虫の声、そして皆の談笑を奪い去るのであった。
わたしは強烈な耳鳴りに耳を抑えて耐えた。
すると、どうしてもある一点が気になるのであった。
耳鳴りはわたしの中から響き渡る音のように思えるが、その原因は外にあり、わたしが無意識に気になるその一点にそれがあるような気がしてならなかったのである。
わたしは顔を上げてその一点に視線を送った。
そこは、ペンション横の川原へと続く階段であった。
そこには驚くことに白い浴衣のような服を着た黒髪の女が立っていた。
2013年2月10日日曜日
追憶 355
「大丈夫?酔っ払ったの?」
わたしはAの髪の毛に話し掛けた。
すると、ゆっくりと頭が持ち上がり、切れ長のきれいな目がわたしを捉えた。
しかしながら、その表情は暗く、わたしに対応するのに力を振り絞っているのが見て取れた。
「あ…うん…」
Aは弱々しい口調でそう答えた。
「水でも飲む?」
「いらない…ありがとう…」
小さな笑みを浮かべた後、Aはまた同じように俯いた。
わたしはAのことを心配したが、心配したところでどうすることもできなかったので、腹ごしらえのために肉に手を伸ばした。
その時、耳を劈(つんざ)くように耳鳴りが襲った。
わたしはAの髪の毛に話し掛けた。
すると、ゆっくりと頭が持ち上がり、切れ長のきれいな目がわたしを捉えた。
しかしながら、その表情は暗く、わたしに対応するのに力を振り絞っているのが見て取れた。
「あ…うん…」
Aは弱々しい口調でそう答えた。
「水でも飲む?」
「いらない…ありがとう…」
小さな笑みを浮かべた後、Aはまた同じように俯いた。
わたしはAのことを心配したが、心配したところでどうすることもできなかったので、腹ごしらえのために肉に手を伸ばした。
その時、耳を劈(つんざ)くように耳鳴りが襲った。
2013年2月9日土曜日
追憶 354
わたしは皆と楽しい時間を過ごしていた。
わたしは酒を飲まないからお茶やジュースで乾杯し、安い肉も大自然という最高の調味料によって気分豊か?に味付けされている。
気分が良ければ何でもうまいのである。
しかしながら、楽しさの中に一点の陰りがあることをわたしは気に掛けていた。
それは、酔っ払っているのか?眠たいのか?は分からないが、わたしの正面に座っているAという女の子がとても疲れた様子でうな垂れているということである。
終始俯(うつむ)いているので表情までをうかがい知ることはできないが、姿を見れば心配する気持ちが沸き起こるのであった。
中学校時代にわたしはAと同じクラスになったことはなかった。
話したこともないのである。
ただ、見たことがあるという関係であった。
わたしはどうしてもAのことが気になって仕方がなかったので、席を立ってAの隣に座った。
わたしは酒を飲まないからお茶やジュースで乾杯し、安い肉も大自然という最高の調味料によって気分豊か?に味付けされている。
気分が良ければ何でもうまいのである。
しかしながら、楽しさの中に一点の陰りがあることをわたしは気に掛けていた。
それは、酔っ払っているのか?眠たいのか?は分からないが、わたしの正面に座っているAという女の子がとても疲れた様子でうな垂れているということである。
終始俯(うつむ)いているので表情までをうかがい知ることはできないが、姿を見れば心配する気持ちが沸き起こるのであった。
中学校時代にわたしはAと同じクラスになったことはなかった。
話したこともないのである。
ただ、見たことがあるという関係であった。
わたしはどうしてもAのことが気になって仕方がなかったので、席を立ってAの隣に座った。
2013年2月8日金曜日
追憶 353
これは大天使ミカエルの意思に違いない。
大天使ミカエルがわたしたちを守るために、わたしを使ってしたことであるだろう。
わたしは光の杭が結界のような役割を果たし、外と内を隔てる壁になるのではないかと思った。
我に返り振り向くと、そこにはKの姿があった。
わたしはKに対して光の杭のこと、そして、それが結界になってくれるのではないかと思うということを話した。
Kはいつもの明るい感じで「そうか」とだけ言い、わたしをバーベキューに誘った。
寿司屋で少しは食べてきたものの、バーベキューのことを考えて抑えていたので、ちょうど小腹が吸いていた頃だった。
その後、わたしは皆の輪の中に入り、楽しい時間を過ごした。
大天使ミカエルがわたしたちを守るために、わたしを使ってしたことであるだろう。
わたしは光の杭が結界のような役割を果たし、外と内を隔てる壁になるのではないかと思った。
我に返り振り向くと、そこにはKの姿があった。
わたしはKに対して光の杭のこと、そして、それが結界になってくれるのではないかと思うということを話した。
Kはいつもの明るい感じで「そうか」とだけ言い、わたしをバーベキューに誘った。
寿司屋で少しは食べてきたものの、バーベキューのことを考えて抑えていたので、ちょうど小腹が吸いていた頃だった。
その後、わたしは皆の輪の中に入り、楽しい時間を過ごした。
2013年2月7日木曜日
追憶 352
その時、わたしは自らの足が自らの意思に反して勝手に運ばれるのを見た。
Kを置いてわたしは一人歩き出した。
ある程度歩いた場所で立ち止まる。
そこでわたしは人差し指と中指を差し出して宙に一筋の線を描いた。
暗闇を切り裂くようにして光が現れる。
それは大天使ミカエルの力、光の杭である。
わたしはそれを掴むと目の前にある適当な石に突き刺した。
石に立った光の杭は、まるで灯台のように優しくも強い光を放って暗闇を遠ざけた。
そこには安心感が生み出されたように思える。
わたしは更に歩いた。
そして、光の杭を突き立てる。
やがて、皆がいる場所を中心にして、円を描くように光の杭が並んだ。
Kを置いてわたしは一人歩き出した。
ある程度歩いた場所で立ち止まる。
そこでわたしは人差し指と中指を差し出して宙に一筋の線を描いた。
暗闇を切り裂くようにして光が現れる。
それは大天使ミカエルの力、光の杭である。
わたしはそれを掴むと目の前にある適当な石に突き刺した。
石に立った光の杭は、まるで灯台のように優しくも強い光を放って暗闇を遠ざけた。
そこには安心感が生み出されたように思える。
わたしは更に歩いた。
そして、光の杭を突き立てる。
やがて、皆がいる場所を中心にして、円を描くように光の杭が並んだ。
2013年2月6日水曜日
追憶 351
わたしがこの胸騒ぎを吐き出そうとした時、Kがニヤついた表情を浮かべて切り出した。
「ペンションの横に川原に下りるための階段があるだろ?あそこにヤバイのがいるぜ…女なんだけど、昼間っからずっとあそこにいるんだよ。今もずっとあそこから俺たちのことを見てるんだよね」
Kの話とわたしの胸騒ぎが一致した気がした。
明確な理由はないが、腑に落ちるのである。
わたしが感じる胸騒ぎはKがいう「女」によるものなのかもしれない。
わたしはペンション横の階段に視線を送った。
暗闇の中に何となくその姿を確認することができる。
しかしながら、そこに女の姿は無い。
Kには見えているであろうそれが、わたしには見えなかった。
「ペンションの横に川原に下りるための階段があるだろ?あそこにヤバイのがいるぜ…女なんだけど、昼間っからずっとあそこにいるんだよ。今もずっとあそこから俺たちのことを見てるんだよね」
Kの話とわたしの胸騒ぎが一致した気がした。
明確な理由はないが、腑に落ちるのである。
わたしが感じる胸騒ぎはKがいう「女」によるものなのかもしれない。
わたしはペンション横の階段に視線を送った。
暗闇の中に何となくその姿を確認することができる。
しかしながら、そこに女の姿は無い。
Kには見えているであろうそれが、わたしには見えなかった。
2013年2月5日火曜日
追憶 350
皆から離れたのは、自分たちなりの配慮である。
わたしはKにこの場所の霊的な状況について尋ねたかったし、Kもそのことについて話をしてくれるはずである。
皆はそれを怖がるかもしれない。
そうなれば、場の雰囲気が崩れてしまうかもしれないからである。
わたしは胸の中に異物を抱えているような、何とも言えない嫌な気分であった。
それは川原に下りてからのことであった。
何が原因なのかは分からないが気分が優れないし、どことなく緊張感もあった。
わたしはそれを違和感として捉えているため、きっと何らかの影響力が働いているはずである。
それを気分だと片付ければそれまでであるが、それを気分で片付けることができない自分がいるのである。
わたしはKにこの場所の霊的な状況について尋ねたかったし、Kもそのことについて話をしてくれるはずである。
皆はそれを怖がるかもしれない。
そうなれば、場の雰囲気が崩れてしまうかもしれないからである。
わたしは胸の中に異物を抱えているような、何とも言えない嫌な気分であった。
それは川原に下りてからのことであった。
何が原因なのかは分からないが気分が優れないし、どことなく緊張感もあった。
わたしはそれを違和感として捉えているため、きっと何らかの影響力が働いているはずである。
それを気分だと片付ければそれまでであるが、それを気分で片付けることができない自分がいるのである。
2013年2月4日月曜日
追憶 349
その声は、わたしの頭の中に直接的に響き渡った。
それは決して大きな声ではなかったし、明確なものでもない微かな声ではあったが、とても強い意思を感じるものであった。
わたしは一瞬、何が起きたのか分からなかった。
それを理解しないままにわたしの中には新たな意思が生み出されていた。
「わたしはこの場を守らなければならない・・・」
心の中でわたしはそのように思っていたが、一体何からこの場所を守れば良いのか分からなかった。
その時、わたしはKを誘い、皆から少しだけ離れた。
それは、何か只ならない感覚があったからである。
わたしはKに対して「大丈夫だった?」と聞いた。
それだけでKにはわたしが何を聞きたいのか分かったようであった。
わたしたちは少し歩くことにした。
それは決して大きな声ではなかったし、明確なものでもない微かな声ではあったが、とても強い意思を感じるものであった。
わたしは一瞬、何が起きたのか分からなかった。
それを理解しないままにわたしの中には新たな意思が生み出されていた。
「わたしはこの場を守らなければならない・・・」
心の中でわたしはそのように思っていたが、一体何からこの場所を守れば良いのか分からなかった。
その時、わたしはKを誘い、皆から少しだけ離れた。
それは、何か只ならない感覚があったからである。
わたしはKに対して「大丈夫だった?」と聞いた。
それだけでKにはわたしが何を聞きたいのか分かったようであった。
わたしたちは少し歩くことにした。
2013年2月3日日曜日
追憶 348
とは言え、予想していたよりは少ない人数であった。
Kが立ち上がりわたしを迎えた。
皆でバーベキューの火を囲って談笑していたようである。
次に、中学の時の同級生のHがわたしを迎えてくれた。
彼は頭が良かったが、お調子者で少し間の抜けた面白い男であった。
それに加えてA、B、C、Dと、いずれも中学の同級生の女の子たちがいて、それぞれがわたしを迎えてくれた。
しかしながら、Aという女の子はすぐに顔を逸らして俯(うつむ)いてしまった。
とてもしんどそうである。
わたしはAのことが気になった。
お酒でも飲み過ぎたのだろうか?
それなら良いが、妙な胸騒ぎがわたしをAに引き止めるようであった。
わたしは皆と挨拶を交わしながらその輪の中に入ろうとしたが、その時頭の中に声が響いた。
「この場を守りなさい…」
Kが立ち上がりわたしを迎えた。
皆でバーベキューの火を囲って談笑していたようである。
次に、中学の時の同級生のHがわたしを迎えてくれた。
彼は頭が良かったが、お調子者で少し間の抜けた面白い男であった。
それに加えてA、B、C、Dと、いずれも中学の同級生の女の子たちがいて、それぞれがわたしを迎えてくれた。
しかしながら、Aという女の子はすぐに顔を逸らして俯(うつむ)いてしまった。
とてもしんどそうである。
わたしはAのことが気になった。
お酒でも飲み過ぎたのだろうか?
それなら良いが、妙な胸騒ぎがわたしをAに引き止めるようであった。
わたしは皆と挨拶を交わしながらその輪の中に入ろうとしたが、その時頭の中に声が響いた。
「この場を守りなさい…」
2013年2月2日土曜日
追憶 347
川原を進むと、小さな石が次第に大きくなっていく。
それに加えて、川が流れる音が耳に届いてきた。
先ほどまでは虫の鳴き声が聞こえていたが、今では川の流れる音の方が大きく聞こえてくる。
わたしが携帯電話の液晶画面を頼りに近付いてくるのに気付いて、目的地にいる何人かが声を上げた。
「誰?誰か来たよ!」
男女のそんな声が川の流れる音に乗って運ばれてくる。
大きな石を飛び越えながら、わたしは皆の所に辿り着いた。
そこには懐かしい顔が揃っていた。
それに加えて、川が流れる音が耳に届いてきた。
先ほどまでは虫の鳴き声が聞こえていたが、今では川の流れる音の方が大きく聞こえてくる。
わたしが携帯電話の液晶画面を頼りに近付いてくるのに気付いて、目的地にいる何人かが声を上げた。
「誰?誰か来たよ!」
男女のそんな声が川の流れる音に乗って運ばれてくる。
大きな石を飛び越えながら、わたしは皆の所に辿り着いた。
そこには懐かしい顔が揃っていた。
2013年2月1日金曜日
追憶 346
足元に気を配りながら慎重に進む。
駐車場から少し下ると、大きな木造のペンションがわたしを出迎える。
これは、キャンプ場の管理施設である。
昼間は施設内で軽い食事をすることができたり、アイスクリームやジュースなども置いてある活気溢れる場所であるが、施設内に夜の闇が入り込んで静まり返っている様を見ると昼間の活気は微塵も感じられず、そこには不気味ささえ覚える。
ガラス越しに施設内を見渡したが、その雰囲気に寒気を感じて先を急いだ。
ペンションの横に屋根付きの簡易休憩場があるが、皆はそこにはいないようだ。
辺りを見渡しても気配がない。
ペンションを回り込むと、一段下がった所に川原があった。
わたしは足元を気遣いながら石段を下りた。
足元の砂と小石がわたしにそれを伝えた。
見渡すと、少し離れた所に火の明かりが微かに揺れて、人の影を川原の大きな石に映しているのが見えた。
暗闇の中に小さな炎が散らつくのはかなり目立つものである。
わたしは灯台に導かれる小舟のような気分で、その明かりに向かって歩みを進めた。
駐車場から少し下ると、大きな木造のペンションがわたしを出迎える。
これは、キャンプ場の管理施設である。
昼間は施設内で軽い食事をすることができたり、アイスクリームやジュースなども置いてある活気溢れる場所であるが、施設内に夜の闇が入り込んで静まり返っている様を見ると昼間の活気は微塵も感じられず、そこには不気味ささえ覚える。
ガラス越しに施設内を見渡したが、その雰囲気に寒気を感じて先を急いだ。
ペンションの横に屋根付きの簡易休憩場があるが、皆はそこにはいないようだ。
辺りを見渡しても気配がない。
ペンションを回り込むと、一段下がった所に川原があった。
わたしは足元を気遣いながら石段を下りた。
足元の砂と小石がわたしにそれを伝えた。
見渡すと、少し離れた所に火の明かりが微かに揺れて、人の影を川原の大きな石に映しているのが見えた。
暗闇の中に小さな炎が散らつくのはかなり目立つものである。
わたしは灯台に導かれる小舟のような気分で、その明かりに向かって歩みを進めた。
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