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自身の体験をつづりたいと思います。
拙い文章ではありますが、お暇ならお付き合いください。

2018年9月29日土曜日

追憶 2183

建物の死角で、誰かが会話しているのだろうか?
歩を進めるにつれて、会話がラジオから流れる音であることに気が付いた。
誰かが聴いているのだろうと思って建物を曲がってみたが、そこには誰の姿もなかった。
不思議に思い音源を追ってみると、見上げた先の窓が開いており、そこにラジオが外向きで置かれているのが見えた。
ラジオは部屋の中ではなく、外に向けられているのである。
わたしは不思議に思って、音の向かう先を見るが、そこには山の斜面を切り開いて作られたミカン畑の残骸が確認出来るだけである。
それは、人の手を離れて何年も経過したような荒れた畑である。
ミカンの木は大半が枯れ、ちらほらとぶら下がるオレンジ色の果実はとても小さく、痩せて今にも干からびそうであった。
ラジオは、ミカン畑の有り様とは対照的に、明るい話題を振り撒いていた。



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