本堂の中は埃(ほこり)っぽく、靴下越しの畳にはザラザラとした塵(ちり)を感じた。
陽の光の挿し込む部屋は全体的に暗く、襖(ふすま)を開け広げてあっても、空気が淀(よど)んでいるように思えた。
まるで、黒い霧のようなものが立ち込めているようである。
住職からは、黒い煙のようなものが立ち上り、それが本堂の空気を汚しているのだろう。
わたしは、一刻も早く新鮮な空気を吸いたかったが、何か面白いものが見えるかも知れないと思い、もうしばらく様子を見ることにして耐えた。
わたしには、車通りの激しいトンネルの中を歩いているような感覚なのである。
出来れば、この部屋の空気は僅(わず)かでも吸いたくないのだ。
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