住職の読経(どきょう)が終わった。
その瞬間に、わたしは一人席を外し、急いで外へ向かった。
それは、深呼吸がしたかったからである。
廊下に出て、胸一杯に外の新鮮な空気を吸い込んだ。
そして、肺の中の"スモッグ"を力一杯に吐き出した。
そのせいか、少しだけ気分が良くなった気がした。
後ろでは、祖母が住職と話す声が聞こえる。
わたしはそれを無視して靴を履いた。
この後に、寺の裏山にある祖父の墓に参ることを知っていたからである。
わたしは皆よりも一足早く、一人で祖父の墓に向かうことにした。
鐘を横目に、本堂に隣接する住職の住宅を抜けて、墓へと通じる坂道へと近付いた。
すると、どこからともなく、人の話す声が聞こえてきた。
耳を澄ますと、建物の陰になっている墓へと通じる坂道から聞こえてくるようである。
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