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自身の体験をつづりたいと思います。
拙い文章ではありますが、お暇ならお付き合いください。

2017年4月5日水曜日

追憶 1668

空き家には、小さな門戸(もんこ)が備わっていたが、扉は外れていた。
門戸の枠組みだけの状態である。
わたしはそこから家の様子を伺(うかが)っていたのだが、門戸の端に目をやった時に驚いた。
それは、門戸の端から覗き込むようにして、若い女性の顔が半分だけが見えていたからである。
空き家だと思っていたが、人が住んでいたのだろう。
彼女はわたしを不審(ふしん)に思ったに違いない。
見ず知らずの男が家の様子を伺っているのである。
しかも、こんな山奥である。
誰でも不審に思うだろう。
恐ろしくて覗き見ているに違いない。
わたしは申し訳なく思い、誤解を解くためにヘルメットのバイザーを上げて大袈裟に会釈(えしゃく)をした。
目線を戻すと、既に女性の姿はなかった。

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