黒い水のようなものが鼻を塞ぐと、わたしは息が出来なくなった。
	それは、耳と目を塞いだ。
	すべての感覚が黒く塗り潰された時、わたしは人影の目の前にいた。
	それは、膝(ひざ)を抱えてうずくまるHであった。
	わたしはこれがHの心の一部であることを理解した。
	それは、わたしが同じ状態を得たからである。
	同じ状態を得れば、相手のことを理解することもできるのである。
	ここはネガティブな感情の吹き溜まりのような場所であろう。
	それは、雨のように心に降り注ぎ、集合して川と成り、蓄積して海と成る。
	それがここなのであろう。