「それで良いのです」
どこからか声が届いた。
同時に胸の痛みと吐き気が強襲し、わたしは黒い”箱”を吐き出した。
意識が分断するように感じるほどの衝撃である。
回復を待って改めて見ると、それは古びた木箱であった。
頑丈そうな鉄の鍵がかけてあり、簡単には開きそうにもない作りである。
胸の痛みと吐き気は無くなった。
恐らくは、この木箱が原因であったのだろう。
女の子は泣くのを止め、座ったまま沈黙していた。
疲労した身体に鞭(むち)を打って、わたしは木箱に近付き、両手でそれを抱え上げた。
何が入っているかは分からないが、それは想像していたよりも随分(ずいぶん)重たいものであった。
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