約束の時間にAはやって来た。
	
	玄関の磨りガラス越しには、夜の静寂を背景として、細身の女性の姿が映し出されている。
	しなやかに伸びた頭身には、山ツツジのような気高さと、凛とした美しさを感じた。
	扉を引くと、退屈な山の緑をツツジの花が鮮やかに彩るように、Aの笑顔が夜の静寂を華やかなものに変えていた。
	わたしは胸を打たれたように感じて、Aの笑顔を褒(ほ)めた。
	それを受けたAは、しなやかにそれを返す。
	すっかり女性になっていた。
	久々の再会を喜び合って、わたしはAを部屋に通した。
	
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