これは、先程のNの価値観に通じるものがある。
	この女も偏見を抱いているのである。
	偏見を抱いているために歪み、苦しむのだ。
	本来ならば、美しさと喜びの溢れる世界なのである。
	しかし、偏見がそれを阻止する。
	わたしは女を助けなければならない。
	この偏見の地獄を終わらせなければならないのだ。
	女はNを再び偏見へと誘(いざな)うだろうことは予想ができる。
	それでは、二人共不幸になってしまうのである。
	女の血走った目がわたしを捉えた。
	同時に、顎(あご)が外れていなければ開かないほどに口を開いた。
	真っ黒な口内からは、わたしを威嚇(いかく)するかのように嗄(しわが)れた音が鳴っていた。
	
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