女の攻撃を耐え続けていると、場の空気が変わる瞬間があった。
わたしはその瞬間を肌で感じた。
今までは怒りの感情によって支配されていた空間が、戸惑いへと変わったのである。
女は戸惑っていた。
それは、わたしが逆らわないからであろう。
攻撃すれば仕返しがあるのが普通である。
しかしながら、わたしは怒りもせず、怯(おび)えもしない。
女にしてみれば、これほど奇妙なことはないであろう。
普通という、自らの常識から外れたものに遭遇した時、人は混乱する。
そして、恐るのである。
この場で恐れを抱いているのは女の方である。
わたしの行動は、女にしてみれば理解不能なのであろう。
そして、戸惑いと共にわたしの首を絞める力が緩んだ。
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