Nにはもう一つの課題があった。
それは、霊的な存在との関係である。
Nが一人暮らしを始めた土地とアパートに初めて出向いた時、わたしは居心地の悪さを感じた。
その土地にもアパートにも、黒い靄(もや)がかかっているように感じて、どうにも落ち着くことができないのである。
全体的に世知辛いような印象であった。
その日、わたしはNのアパートに宿泊させてもらったが、ほとんど眠れなかった。
Nの目の下に大きな隈(くま)ができているのも納得することができた。
わたしはこの土地での一人暮らしが、Nの精神を少しずつ削り取っていくだろうと感じた。
しかし、わたしはそれで良いと思えた。
それは、Nが成長するためには必要な過程であるということを感じていたからである。
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