わたしが捕らわれたのは、この人影を熟視するためであったのだろう。
	人影からは不気味さを感じるが、それは決して敵意などではない。
	寧(むし)ろ、何か”大きな”ものを感じていた。
	しばらく見つめ合っていたので、わたしには人影の姿が手に取るように分かった。
	それは、全身を漆黒の直毛で覆われたチンパンジーのような存在であった。
	全体的に細身であり、手足が異様に長く、小さな顔には目以外には見当たらない。
	しかし、このチンパンジーのような存在は笑っているように思えた。
	20年を超えて自然界に生きているわたしにとって、この光景は異様に思えてならない。
	それが不気味さを際立たせているのであろう。
	
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