黒い煙のようなものは、光の十字架によって光る霧のようになり、吸い込まれるようにして天へと向かった。
次にわたしは動かなくなった男を引き寄せて抱き締めた。
すると、男の身体が輝きを放った。
光が収まると、鎧は白い着物に変わり、痩けた頬は膨らみ、汗や血に塗れた身体も綺麗になったのである。
わたしの腕の中には立派な青年の姿があった。
青年は静寂に包まれて眠っているように沈黙している。
すると、わたしの腕を離れて、先程の霧と同じように天へと向かって見えなくなった。
彼はずっと戦い続けていたのだろう。
それは、戦(いくさ)や敵とではない。
彼は自分自身と戦い続けていたのである。
彼は自分を許すことができたのだろう。
それは、わたしが彼を許したからである。
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