このブログについて

自身の体験をつづりたいと思います。
拙い文章ではありますが、お暇ならお付き合いください。

2017年6月28日水曜日

追憶 1725

わたしはあの猪がただの動物には思えなかった。
わたしを監視するために遣わされた、化けた獣のように思えるのである。
猪は、生命体としての存在であるだろうが、何かが猪を通じてわたしに会いに来てくれたように思えてならなかった。
霊的な存在が猪に乗り移っているような
、そんな不思議な感覚を得たのである。
それが、白い象なのかは分からないが、わたしにとっては不思議な出来事だった。

それから、周辺の清掃をした。
しゃがんでゴミを拾い上げようとした時、渓流を挟んだ反対側の斜面から、鈍い足音のようなものが聞こえてきた。
わたしは音の出処(でどころ)を探した。
すると、木々の間に男が渓谷を下っているのが見えた。
男は襤褸(ぼろ)の着物と、朽ちた鎧(よろい)を着けていた。
頬(ほほ)は痩(こ)け、ひん剥かれた目の玉が異様な輝きを放っていた。
男の目の玉を見れば、彼がわたしを目指していることは一目瞭然であった。


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