白い象は、子ども達の笑い声を引き連れて、渓谷を渡った。
	子ども達の笑い声が聞こえなくなると同時に、わたしは束縛を解かれたような感覚を得た。
	薄暗い森の中には、小さな虫の声だけが響いている。
	わたしは独りで取り残され、しばらく呆然としていた。
	滲(にじ)む視界の中で、様々なことを考えていたが、考えたところで答えが導けないのはいつものことである。
	焦点が渓流の流れに合ったのを自覚して、わたしは目的を達したのだと、何の根拠も無く”理解”した。
	わたしは今日、体調不良によって森へ向かい、白い象に会わなければならなかったのであろう。
	
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