刺すような視線に対して、わたしは反射的に視線を返した。
すると、絶壁の岩壁の高い位置に、一頭の大きな猪がわたしを監視するように睨(にら)み付けていたのである。
わたしは猪の視線に射抜かれて動けなくなった。
猪もまた、わたしと同じように微動だにしなかった。
わたしは心臓の鼓動が素早くなるのを感じた。
緊張しているのである。
しかしながら、呼吸が深く、弱くなっていることにも気が付いた。
肉体(本能)は危険を感じてはいないのであろう。
この緊張感は、知らないことを学んでいる時に味わう、心が弾(はず)むような高揚感である。
わたしは猪に会ったのを、なぜか喜んでいたのであった。
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