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自身の体験をつづりたいと思います。
拙い文章ではありますが、お暇ならお付き合いください。

2017年6月26日月曜日

追憶 1723

しばらくの間、わたし達は緊張感で結ばれていた。
わたしは猪から視線を離してはいけないような気がして、見詰め続けていたのである。
その時、葉先を揺らす優しい風が渓谷を吹き抜けた。
それを合図としたように、わたしと猪を結ぶ緊張の糸が切れたように感じた。
不意に力が抜けた時に初めて、わたしは自分が力んでいたのだと知ったのである。
すると、わたしはこの状況が面白くなって笑った。
わたしが笑ったのを見て、猪は興味を無くしたかのように鼻を鳴らし、絶壁を駆け上がって行ってしまった。

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