そして、炎の中であの老女が、悪夢の中と同じように焼かれているのである。
老女は炎から逃れようとして、身を捩(よじ)り、腕を上げて暴れた。
溺れてはいないが、藁(わら)をも掴むとはこのことだろう。
叫び声を上げているのであろうが、わたしには何も聞こえなかった。
わたしは周囲を見渡した。
それは、わたし以外にも老女が焼かれている姿を見ている人がいるかも知れないと思ったからである。
しかしながら、皆平然としていた。
皆には見えていないのかも知れない。
司会の女性からの会場内に響き渡る豪勢な紹介を受けて、金糸の派手な着物をまとい、頭には立派な被り物を乗せ、手には白く長い房(ふさ)のようなものを持った和尚が、皆からの礼拝を受けながら登場した。
同じような格好をして、楽器のようなものを抱えた和尚が二人、それに続いた。
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