革の靴(サンダル)は走るのには適さない。
	
	石畳がそれを助長させていた。
	男は暗がりの街を懸命に逃げている。
	月明かりに照らし出されるのは、石で建築された街並みであった。
	小さな石の住宅が狭い通りに所狭しと並んでいる。
	男にはそれが迷路のように思えた。
	自身の心臓の高鳴りと激しい息遣いに混じって、遠くから切迫した男達の声が届く。
	これは、追手によるものだろう。
	身体が鈍くなるのと、声が近くなるのが比例している。
	このままでは、追手の毒牙にかかるのも時間の問題であるだろう。
	
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