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自身の体験をつづりたいと思います。
拙い文章ではありますが、お暇ならお付き合いください。

2015年10月11日日曜日

追憶 1126

その時、真横に位置する住宅の木製の扉が音もなく開いた。
それは、警戒心を以て外の様子を伺(うかが)う行為であるだろう。
男は扉の軋(きし)む微かな音と、中に潜む警戒心に気が付き、無意識の内に闇夜よりも更に暗い隙間を見た。
男の激しい息遣いと、もうすぐ近くに聞こえる追手の罵声(ばせい)にも似た声と足音が場を繋いでいた。
その時、扉が少しだけ開くと、日に焼けた白髪混じりの白人の女性が、顔を月明かりに映すことを嫌うようにして男を呼んだ。

「…中へ」

彼女のその言葉だけで、男はすべてを察した。



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