背筋に冷たいものを感じて、わたしは動揺した。
「苦しめ…苦しめ…苦しめ…」
髪の毛の中からは嗄(か)れた声が延々と聞こえてくる。
わたしは自らの中に怒りや恐怖といった感情が膨れ上がるのを感じていた。
しかしながら、わたしは自らの心の中に、なぜか喜びの感情が沸き起こってくるのを感じていた。
わたしの目の前に存在しているのは霊である。
わたしは本来、霊に会いたかったのだ。
霊が嫌いでこんなことをしているのではい。
わたしは霊が好きだから、ここにいて、こんなことをしているのである。
わたしにとっては、霊を見て喜びの感情が沸き起こるのはごく自然なことであった。
それは、本能的な感覚なのかも知れない。
わたしが喜びの感情を抱くと、髪の毛の中の口が引き締まるのを見た。
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