わたしたちは互いに時が来たことを悟った。
	わたしたちの間に言葉は必要ではなかった。
	それは、不器用ながらにも愛によって結ばれていたからである。
	男の澄んだ瞳に対して、わたしは小さく頷(うなず)いて見せた。
	それを確認して、男の身体は宙を舞った。
	引き寄せられるようにして天へと向かう。
	光の中には何があるのだろう?といつも思う。
	その先には天国と呼ばれる楽園があるのだろうか?
	天へと向かう人の表情はいつも恍惚(こうこつ)としている。
	この男も”良い場所”に向かうに違いない。
	そう思うと嬉しかった。
	男の姿が光に包まれて見えなくなると同時に天が閉じた。
	
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