ここまでは何ら変わったことはない。
	多くの人がこのような視界を経験しているだろう。
	わたしが興味を引かれたのは、ここからの話である。
	視界は地面によって覆い尽くされようとしていた。
	ゆっくりと迫る地面に対して、Nができることは何一つとしてなかった。
	思考は追い付かない。
	本能が機能して、腕が受け身の姿勢を整えようとしていたかも知れない。
	しかし、それが間に合うかどうかは難しいところである。
	その時、背後から白く大きな何かが視界に入り込んだ。
	それは、身体を包み込むようにして、Nと地面とを仲裁したのである。
	スローモーションの中で、大切な荷物を扱うようにしてNの身体はゆっくりと地面に置かれた。
	そこには、何の衝撃も感じなかったのである。
	
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