上京すると、当時学生だった兄の部屋(ワンルーム)に住まわせてもらうことになった。
兄は駒込に住んでいた。
とりあえず働かなければならないという考えしかなかったので、わたしは修学旅行以来の東京の街を散策しながら、ジーンズに関する仕事(バイト)が無いかとあちこち探して歩いた。
渋谷、原宿、高円寺、下北沢…
この辺りの街なら、ジーンズに関する仕事が多いのではないかと考えた。
特に古着屋が多かったし、そこにはビンテージのジーンズや古着をたくさん扱っている店もあった。
わたしはそういうアイテムに携わる仕事がしたかったし、それに関する知識が欲しかったのだ。
しかしながら、どの古着屋も店の規模は小さく、「つて」がなければ働けそうもないと感じた。
それに、古着屋のバイトで生活していくことが出来るのだろうか?という不安が頭から離れなかった。
この頃のわたしは「やりたいこと」と収入(生活)との間に揺れていた。
何日も様々な街を歩いたが、働きたい店が決まらなかった。
そんなある日、自らの現状を嘆きながらJR山手線駒込駅の周辺を歩いていると、パチンコ店の前を歩いていることに気が付いた。
わたしはどういう訳か、何気なく店内に足を運んでいた。
耳をつんざくような雑音がわたしを襲った。
その店はテナントとしてビルに収まっているような形式ではなく、パチンコ店だけという作りだったので中は広く感じられた。
ピカピカとわざとらしく光を放つパチンコ台とそれに向かう背中を丸めたタバコ臭い人たち。
わたしはそれらを掻き分けながら通路を渡った。
わたしは客ではない。
元来、ギャンブルには興味がない。
通路を渡りながら、ここで働いたら良い給料がもらえるのではないかと考えていた。
古着屋のバイトよりは同じバイトでも高収入に違いない。
わたしは「やりたいこと」と収入(生活)を頭の中で天秤にかけていた。
0 件のコメント:
コメントを投稿